とっておきの恋
轟音と一緒にコースターは滑り落ちた。

あたしたちは風に飲み込まれていく。




きゃ!

怖いよ。



思わず顔を下に向けてしまう。




「エリちゃん、ちゃんと目あけて!」


安部くんが大声で叫んだ。




そうだ、ちゃんと目あけてないと。

なにが見えるんだろう。




あたしは勇気を出して、顔をあげた。





コースターは遊園地のサイドラインぎりぎりのところに組まれたレールを走る。

東京の下町だ。

花やかたのすぐ隣は、誰かさんの家だったりする。

コースターがカーブをまがるたび、その誰かさんの家のベランダにつっこみそう。



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