とっておきの恋
「どう? エリちゃん!」

安部くんがとなりで怒鳴っていた。

声が風と振動で割れている。



「最高だよ!」



あたしも怒鳴って返事する。



でも安部くんは聞こえないみたいで、あたしの口元に耳を近づける。

あたしはもう一度、大声をあげようとした。



「さいこ…う…」



でも、その声はすぐに頼りなくなってしまって…。



あたしの全身の力が抜け落ちる。







安部くんの唇があたしの右のほっぺに触れていた。






小さなおもちゃみたいな町の中を駆け抜けるコースターは、今までに味わったことのない、不思議なスリルに満ちていた。

あのおうちで誰かさんがふつうにごはんを食べたり、テレビを見てるのかと思ったら急におかしくて、あたしはいっぱい笑った。


隣に座る安部くんもやっぱり笑ってて、あたしはなんだかとっても幸せで、ずっとこのままこのコースターに乗っていたいなって思った。
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