とっておきの恋
その夜、あたしはなかなか眠れなかった。

昼間のことがなんども頭の中に浮かび、そのたびに目が冴えた。




帰り際――。


「エリちゃん、はい。忘れ物」

安部くんがあたしのピンクの携帯を手渡してくれた。

「あ、ありがと…」

コースターでのキスを思い出し、なんだかまともに顔が見れない。

あたしはうつむいたまま、受け取る。

すると、安部くんは

「いつでもメールしてね」

とあたしだけに聞こえる小さな声で囁いた。




「え?」



あたし、安部くんのメアド知らないのに…。


『安部っち  abeabeabe@*********.jp』


慌てて携帯を開くと、安部くんのメアドがちゃんと入っていた。
< 65 / 203 >

この作品をシェア

pagetop