とっておきの恋
カオリンがいなくなるのを確認して安部くんがつぶやいた。

「意外とあっさり引き下がるんだな…」

その横顔は少しだけ寂しそうで、がっかりしてるようにも見えて、あたしは複雑だった。

まさか、カオリンの気を引きたくて、安部くんあたしと付き合うなんて言ってるの?

でも…怖くて聞けなくて…。

「先に行くね」

と言って走り出すのが精一杯だった。



ねえ、安部くん。

安部くんはどんな顔してあたしの背中を見送ってるの?

あたしは苦しいよ。

安部くんのこと好きになればなるほど、安部くんの気持ちを疑うようになってしまって。

しかもその気持ちを誰にも打ち明けられないなんて…。

幸せと苦しみがめちゃくちゃに混ざり合って、あたしの心をかき乱す。



あたしはどうしたらいいんだろう…。







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