とっておきの恋
「おはよう! 松原さん」

階段を駆け上がる途中ですれ違った男子に声をかけられた。

河辺くんだった。

河辺くんは階段を二段抜かしでひょいひょいと上り、あたしに追いつく。

「ねえ、本当に安部っちと付き合うの?」

河辺くんの眼鏡の奥の目がきらりと輝く。

「え?」

「いいよ、しらばっくれなくてもさ。花やかたでの君たち見てればわかるよ」

「あ…」

あたしは金曜日のことを思い出し顔を赤らめた。

「それより、松原さんは大丈夫なの?」

「だ、大丈夫って?」

三角関係って思ってる?

あたしの声がうわずる。

「噂聞いたからさ」

河辺くんがぎらりとした目であたしを見つめる。

「松原さん、レズビアンだって?」
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