とっておきの恋
午前中、あたしは一言もカオリンと口を利くチャンスがないまま、昼休みを迎えた。

話そう。

カオリンとちゃんと話そう。

あたしは気持ちを固めて、カオリンの席のほうに体を向けた。



「ねえ、カオリン…」

同時だった。

カオリンもあたしの名前を呼んでいた。



あたしたちは顔を見合わせて、ぷっと吹き出してしまった。


「やだ、あははははは」


よかった。

カオリンが笑ってる。

あたしは嬉しくて嬉しくて、なんだか泣けてきた。


「エリ?」

心配そうに覗き込むカオリン。

「ごめん、あたしったらなんで泣いてるんだろ」


とまらなかった。

涙がつぎつぎとあふれて、どうしようもなかった。
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