とっておきの恋
いやあ!

どうしてこういうタイミングで現れるかなあ。



もう、安部くんのばかぁ…。



「俺時間より早く来たから本屋で立ち読みって思ってさ」

安部くんは隣の火の国屋書店を指差す。

「でも、ラッキーだった。エリちゃんに早く会えたもんね」

と安部くんは、笑いながらあたしの髪をやさしく撫でた。



あ…。

また視線だ。

女の子たち、安部くんを見てる。



商品を手にしながら、安部くんに気をとられる女の子たち。

「えー、あの子が彼女?」

ってあからさまな顔であたしにまで突き刺さる視線。



安部くんは気づいてるんだろうね。

そういう視線。

たぶん慣れっこになってるよね。


だからだよ。

そんなふうに動じないでみんなに聞こえるように言うんだ。



「エリちゃん、かわいい。自慢の彼女」って。
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