とっておきの恋
安部くんとの初デートはほろ苦いものだった。

でも、そのあとカオリンとの電話で、二人の友情が深まったように思える。

少しだけカオリンに肩を並べることができたような、同じ目線で物事を見られるようになったような、そんな気持ちがしていた。



放課後、体育館の脇を通ると、バトミントン部が練習しているのが見えた。

「安部くん、いるかなあ」

そう思って、ガラス戸から覗くと、いたいた!

男子バド部がいるいる。

黒いTシャツと黒の短パンの背の高い男の子発見。

安部くんだよ。

ううう、やっぱりかっこいいよ。

安部くん、美少年オーラ出てるって。

「あれ、持田さんじゃん」

振り返ると、河辺くんがラケット持ってたっていた。

「河辺くん! なんでここに?」

「なんでって俺のセリフだけど。俺バド部」

本当だ、そのラケットはバドミントンのだよね。

ああ、それだからか、河辺くんが「安部っち」って親しそうに呼ぶのは。

「ああ、そうか。安部っちに会いに来たんだね」

河辺くんは、そう言うなり、戸をあけて大声で言った。

「安部っち! エリちゃんが来てるよ!!!」
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