とっておきの恋
「ごめんね。あのまんまメールもしないで」

安部くんはくしゃくしゃの顔で笑いかける。

「ううん、あたしこそごめんなさい。あんなふうに泣いたりして…」

恥ずかしかった。

冷静になるとあんな場所で泣いたりして、まるで子どもみたい。

「俺、あれから考えたんだ。エリちゃん、一生懸命自分の気持ちを伝えてくれたじゃない。俺もそれに答えなくちゃいけないなって思って。だからメールじゃなくて、自分の言葉で気持ちを伝えようって…」

安部くん、反則だよ。

そんなかっこいいセリフ、そんなかっこいい顔で、しかもこんな至近距離で言うなんて…。

イエローカードじゃなくてレッドカードだよ。

即退場ものだって。

「エリちゃんのことかわいいなって初めて会ったときから思ってた。まっすぐで、素直で、危なっかしくて、守ってあげたいって思った」

安部くん…。

「本当のこと言うとね、俺、中学の頃松原に振られてるんだ。だからね、エリちゃんが言っていたこともある意味図星なんだ。あいつは幼馴染だし、やっぱり特別な存在であることにはまちがいない。それをエリちゃんに見破られちゃって動揺したよ。それと同時に、エリちゃんが俺のことしっかり見てくれてることもあらためてわかった」

夢みたい…。

あたし、ちゃんと生きてるの?

「だからさ、エリちゃん。俺とちゃんと付き合ってくれないかな」
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