小さな小さな恋物語
『白石 智流』


「はい」


名前は呼ばれていって今度は智流君の番になっていた。


檀上まで上がっていき、校長先生へとお辞儀をして卒業証書を受け取る。


受け取って、脇に挟むように持つと左に方向転換をしてある位置で立ち止まり真正面を見据える。


たったの1、2分の動作なのにあたしにはスローモーション並にゆっくりに見えた。


その時、まっすぐ見据えていた智流君と目があった。



さっきの智流君みたいに笑うことなんて出来なかった。



もう智流君には会えないんだ。



そんな今まで感じたことがない感情が湧きでてくる。



そのために智流君の視線をフィッて反らしてしまった。


あたし、何やってんだろう?



そう思いながら、卒業式は終わってしまった。




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