小さな小さな恋物語
「智流と、ヒック…離れたくないよー」


泣きながら、そう呟く。


俺と離れたくない? またなんで…


「何かあったの?」


佑希の身に何があったのか理解が出来なかった。


だから聞いた。


「あの…ヒッ、ね。ウゥ。夏休み明けに…ヒック。親の転勤で…転校しなくちゃならないの」


佑希が転勤? 違う違う。転校?
せっかく、同じ学校に通えたのに?


「それは本当なの?」


佑希が言ったことを信じることが出来ずに聞き返す。


「ゔん。ほんど」


「そっか」


やっと一緒にいられると思ったのに…。


「今からどこか遠くに行かないか?」


「えっ!」


驚いた顔のままで俺を見上げた。


その顔は涙でグチャグチャになっていた。

俺はその顔がおかしくて笑ってしまう。


「笑うとかひどくない?」

さっきまで泣いてたのにムッとした顔で言う。


ホントにコロコロと表情を変える人だ。



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