流れる星を見つけたら
どれだけ歩いたのだろう
どこを歩いたのだろう

グルグルと足を交互に出し
泣きながらただ歩く。

何で泣いてんの私。

あんな男にキスされて
悔しくて?
悲しくて?
ムカついて?
怖くて?

うん
怖かった。
あんなキスなんて初めてだった。

思い出してまた涙を流す。

もう帰らなきゃ
いい加減
帰らなきゃいけないんだけれど

私の足は止まらない。
童話の中の女の子みたいに、足が勝手に動いてる。

全てが上手くいかない
思った通りにいかない。

もう
嫌だよ。

ふらつきながら歩いていると、目の前の人にぶつかり涙を拭いて謝ろうとしていたら

「あ……」って言われ
もう一度顔をしっかり見ると

癒し系の優しい顔したイケメンが微笑んでいた。

誰だっけ?
どこかで見た顔。
優しい目元をした
鼻筋がスッと通ってるイケメン。

ラフなTシャツにジーンズの彼は「こんばんは」と柔らかい声を出し、私に言う。

私は首を傾け頭を悩ましていると、イケメンはすぐ横にあるオレンジ色した壁の店を指差した。

あ……シェフ。
予約の取れない店の前まで来てしまった。
服装が違うからわからなかった。

「今日はひとりですか?占い師のお姉さんはいませんか?」
声が優しくて
つい安心してまた涙が出てしまう。

「ラテでもいかがですか?」
シェフはポケットから鍵を出し、店の扉をそっと開いた。


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