流れる星を見つけたら
そうかもしれないと素直に思い、味わって口にする。

この場所は温かい
身体も心も温まる。

「私はですね」

「はい」

「詐欺師なんです」
自白してエヘへと笑うと、シェフも笑う。

「占いなんて多少は勉強したけれど、本格的にできないし。採用試験で目の前に座っていたのは近所のお兄ちゃんで『俺を占え』とか言われたら、近所のおばちゃん情報出したら当たり前に当たってるから、採用されて」

不思議だね
ついこの間会ったばっかりの人に、こんな話をするなんて。

知らない人だから
色々話せる事もあるのか

「生活の為に適当な事言って、お客さんをカモにしてる生活。それが普通だと思っていたら指摘されてから……ひどい事されてへこんでます」

「ひどい事?」
イケメンの片方の眉が上がる。

「うん。言えないけど」
苦笑いって
本当に口の中が苦くなるんだね。
私はラテを口にする。

「そうですか」
シェフは追及もせず一度奥の厨房へ入り、白いお皿の上にのった苺のタルトをカウンターの上にのせる。

小さなタルトだけど
シロップ漬けの苺がキラキラ輝いてる。

「季節限定です」

「綺麗」
そして美味しそう。

「食べてみて」

「ありがとうございます。作ったんですか?」

「買ってきました」
平然と答えるシェフにウケてると

「笑えるから大丈夫ですよ」って言われた。

「食べて笑える。だから貴女は大丈夫」

優しい優しい声だった。

だから
また涙がポロリ。

「ついでに泣けるから、もっと大丈夫」

カウンターに頬杖をつき
シェフは微笑む。
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