流れる星を見つけたら
ため息をすると
幸せがひとつ逃げて行く

だっけ?

てか
私の幸せって

何だろう。

口を開かない私

アサリのようだ。

シェフに調理してもらった方がいいのかな。

「恋人がいる人を好きになるって、反則ですよね」

何度目かの信号待ちで
やっと私は声を出す。

「むなしいですよね。頑張っても報われないし。ふたりの楽しい様子なんて見ても悲しいし」

悲しいのか私?

言葉にすると
新たなる発見が出てきて
自分で驚く。

あんなキスした
あいつが悪いよ。

背の高いシェフの隣で小さく小さくなってると

「僕なら確認します」
彼は
ためらいもなく言う。

「本気で好き合ってるのか、互いに幸せなのか確認してから、身を引きます」

「だって……」

「僕が一番嫌いな言葉が『だって』です」


背中から怖いオーラ出てます。
真っ黒い翼がそこから出てきても不思議じゃない人だ。

「あと、次の人が出てくるまで、憧れていてもいいと思います」

「憧れ?」

「そうそう」

中学生みたい
楽しくなって笑うと
シェフも笑って私を見下ろす。

優しい笑顔の似合う人だ。
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