流れる星を見つけたら
息が上がる
背中の視線を意識すればするほど
自分の動きが焦り
足がもつれる

早く
もっと早く
もっともっと早く前に進もう

自分の心音がうるさい

もはや走り出す私を
追いかける背中の影

そして

背中の影は

私を捕える。

見ず知らずの人間に背中から羽交い絞めにされ、ズルズルと暗く細い路地に引きずり込まれる。

怖くて声も出ない。

この前
アイツにキスされた時もそうだった
本当に怖いと
声も動きも封じ込まれる

つかえない女だよ私は!!

コンクリートの壁に体当たりする感じで放り出され、その人物は超近距離でバタフライナイフを取り出し、私の頬に当てる。

ナイフが冷たい。

「金を出せ」

顔は見えない
背はそんなに高くない
黒いフードをかぶり
サングラスをかけてマスクをしている。

完璧強盗。

お金はないけれど
命が惜しい。

私は震える手でバッグを前に出すと、男はそれを乱暴に受け取る。

そう
お願いだから
それを持って帰ってちょうだい

って

思っていたのに

「一発ヤラせろ」

最低な事を言われた。


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