流れる星を見つけたら



「綺麗だね」
うっとりと
遠くのひな壇を見つめる私。

「怖いくらいに」

「表現悪いよ」

「正直な意見。褒め言葉だろう」

一流ホテルの結婚式会場
運ばれてくるごちそうにクラクラしながら、ウェディングドレスの凜子さんを見てうっとり。

私よりうっとりしているのは
隣に座る社長のマー君。

凜子さん
完璧なる美しさ。

白い肌をあえて隠すような品のあるドレス。
年齢不詳なお人形さんみたい。
感動しながら食も進む。

「食べ過ぎたら二次会で食べれないよ」
眼鏡の奥の目を光らせ彼は言う。

そうだ
二次会も予約の取れない美味しいレストランだった。
グラスの飲み物を流し込み
大人しく手を膝の上にのせて食事をセーブしながら、今度は新郎のマー君を観察。

「幸せそうだね社長」

超スピード婚のマー君と凜子さん。
『結婚の決め手は?』って一昨日ふざけて聞いたら『わからない』って真剣に答えてたから、それ以上は突っ込まない事にする。

イメージでは
凜子さんが社長の短い運命の赤い糸を引っ張り、笑いながら自分の身体にグルグル巻きつけた感じ。

「そうだね」
そう言いながら
テーブルの下で私の手を握る。

あれからしばらく経つけれど

いまだに
手を繋ぐだけの仲である。

大人になると
次のステップに進むまでが早いか遅いかどっちかで、私達は後者のタイプ。

付き合ってわかったのは
彼は慎重派って事。

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