モノクロ
「わっ、若菜さんっ! 勘違い……っ」
「こら、さきこ。大声出すなよ。梢が起きるだろ」
「う……っ」
慌てて否定しようとつい大きな声を出してしまった私の腕を先輩が掴み、私は先輩の方に引き寄せられる。
突然のことで私の身体はバランスを崩してしまい、背中が先輩の胸にトンッとぶつかってしまった。
それと同時にドキン!と心臓が跳ねる。
わわわ!
「ほら、俺らはこっち。帰るよ」
「!」
「じゃあな」
「またね~明希ちゃんっ! 気を付けてっ」
「はっ、はいっ! またっ!」
お互いに手を振った後、にこにこの若菜さんとニヤニヤの佐山さんが踵を返して歩き始めた。
佐山さんの肩の向こうには梢ちゃんの頭がひょこっと覗いている。
その後ろ姿からは幸せオーラが出ていて、それに引き込まれるように私の目線も心も捕らえられていた。
……本当に素敵な“家族”だ。
そう改めて思うと、よくわからない寂しさが私の心の中に入り込んできて、広がっていく。
楽しかったはずなのに、何でこんな気持ちになるんだろう?
今まで感じたことのない気持ち……何だか一人が寂しい、だなんて。
……年のせいかな……。