モノクロ
 

佐山家の後ろ姿を見つめながらぼんやりと考えていると、急に先輩の顔が目の前に現れた。


「ひゃっ!?」

「何ぼーっとしてんの?」

「あっ、いえ、何でもないです」


ぱたぱたと手を左右に振って否定する。


「ん? もしかしてさきこ、子供がそんなに欲しい?」

「へっ!?」

「すっげぇ物欲しそうに、梢のこと見てただろ? 今日、ずーっと」

「もっ、物欲しそうって……っ」

「見てた見てた。今も物欲しそうな顔してたし。くくっ」


先輩は私の反応が面白かったのか、くすくすと笑っている。

私、そんな顔してたの?

それは恥ずかしい……っていうか、すっごい痛いレベルなんじゃ……!

……でも、物欲しいっていうか……、そう、佐山さんたちのことを羨ましいと思ってたことは事実で。

私にはすぐに手に入れられないものだし、この先、手に入れられるかどうかもわからないものだから──。

……でも、私以上に……。


「先輩こそ梢ちゃんのこと、すごくかわいいと思ってるでしょう? 子供がすっごく好きなんだなって伝わってきましたよ?」


反撃にはならないけど、感じたことを素直に伝えてみる。

先輩は意外にも私の言葉に素直に頷いた。


「うん、子供は素直だから好きだよ。梢は特に懐いてきてくれるし。自分に無い物ねだりってやつかなー」

「無いものねだり、ですか?」

「そ。人間ってさ、自分が持ってないものに惹かれる性質(たち)だろ?」


それは確かにそうだ。私が今佐山さんたちに持っている気持ちも同じ──。

それなら、先輩は……。

 
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