モノクロ
「じゃあ、先輩は素直じゃないんですか?」
「さぁ? さきこはどう思う?」
「!」
にやりと笑った先輩は私の答えを聞くことなく、手をするりと取って歩き出す。
先輩は何も言わずに歩みを進めていき、私も何も言えずにその後ろをただ着いて行くだけ。
……ズルいよ、先輩。
何で手なんて繋ぐの? 何でこんな風に優しく接してくれるの?
私のこと、ついこの間フッたばかりでしょう?
人がたくさんいるから離れないように、って先輩が思っていることくらいわかる。
でも、こんな風に優しくされたら期待しちゃうのが女心ってものなのに。
「……さきこも素直だよな。そういうところ、かわいいと思うよ」
「え?」
「かわいい」という言葉にどきっと心臓が音をたてるけれど。
「梢と精神年齢が同じ感じ? 永遠の3歳ってか? くくっ」
「なっ! 先輩、酷い!」
「ほら、そうやってすぐむくれるところとか?」
「ぐ……っ! ど、どうせお子ちゃまですもんっ……ひゃっ!?」
すぐに飛び出してきた先輩のからかうような言葉に口を尖らせた時、角から出てきた人とどんっと肩がぶつかった。
よろけそうになった身体をぐいっと力強く引き寄せてくれたのは、繋がれた先輩の手。
先輩の腕が私の背中に回り、身体を支えてくれる。
その距離は、近い。