モノクロ

 
***


「え? 若菜さんからですか?」

「あぁ。ラブレターらしい」

「ラブレター……?」

「あぁ。えらく佐々木さんのこと気に入ったみたいでさ。こずも同じ」

「えっ! 本当ですか!? それ、嬉しいです!」


あの楽しかった日から数日後の朝、佐山さんに可愛いイラストの書かれた封筒を渡された。

あまりにも佐山さんには似合わない封筒で何事かとつい首を傾げてしまったけど、若菜さんからの手紙だと聞いて、なるほどと思った。


「佐々木さんは誰にでもモテるよな」

「いや~、そんなことっ! モテるなら彼氏がいるか、とっくに結婚してますって! あははっ」


いつもなら落ち込みそうなセリフを笑って言えちゃうのは、若菜さんと梢ちゃんのおかげだと思う。

ほんの2時間くらいしか一緒にいなかったのに、“気に入った”なんて言われるなんて嬉しすぎるから。

しかも、手紙をくれるなんて!

今なら何が襲いかかってきても笑っていられそうだ。


「これ、開けてもいいですか?」

「あぁ。どうぞ」


ウキウキしながら封筒を開けると、中から出てきたのは2枚の紙。

下にある1枚は少しシワシワの感触がする。

1枚目には綺麗な字で文字が連なっていて、この前は楽しかった、という内容が書かれてある。

読みながら嬉しさがこみ上げてきた。

 
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