モノクロ
 

「紀村さんは? ずっと実家なんですか?」

「うん。大学も柚ヶ崎大学で近かったし、家出る必要もなかったからさ」

「え、嘘っ! 柚大なんですか!? 私も柚大です!」

「マジで!?」

「マジです、マジです!」


わー! 同じ大学出身の人って、会社に入ってから初めて会った!

ついテンションが上がってしまって、拳を作った手を胸の前で上下にブンブンと振る。


「じゃあ佐々木さんは大学の後輩か! 超レアじゃん! 大学、超地元なのに、うちの会社って殆ど柚大出身っていなくね?」

「そうなんです! 会ったことなかったんですよー!」

「だよな! 他の奴等が同じ大学出身がいた、って言うたびに何か寂しかったんだよなー。出身が同じだからって別に何かがあるわけじゃないけど、テンション上がるし!」

「あ、それすっごくわかりますっ!」


思わぬ共通点に、私と紀村さんは盛り上がる。

同じ出身というだけで、一気に親近感が湧いてくるのが不思議だ。

あの教授がどうだったとか、5年経っても講義の内容は変わらないとか、幽霊が出るという噂の講義室があったとか、いろいろ話し始める。

実際は同じ時に大学に在籍していたわけではないのに、紀村さんと話しているとまるで同じ講義を受けていたような錯覚に捕らわれるくらい、鮮明に大学時代のことが頭の中を駆け巡った。

すごく不思議な感じだった。

すでに日付は変わってしまったというのに、楽しくて仕方なくて、結局私たちは大学の時の話を1時間近くもしてしまっていた。

そのお陰もあって、私と紀村さんはすっかり打ち解けていた。

 
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