モノクロ
 
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「わ! ついにできたんですか!?」

「あぁ。やっとだよ」


フロアのど真ん中にあるテーブルの上に広げられているものは、佐山さんが企画を進めていた商品だ。

ついさっきサンプルが届いたらしく、トイレから戻ってくると企画部でお披露目会が行われていた。

お披露目会はサンプル品が上がってきた時の毎回の行事だ。

色とりどりの革で作られたキーホルダー。

シンプルな楕円形のものから、ギターや蜥蜴(とかげ)の形などオシャレなものまで。

形にこだわっていたこともあって、どれもすごくカッコいい。


「革だからそこそこの値段するけど、質は落とさずに価格を抑えてもらうのが大変だった。でも、こうやって形になったものを見た瞬間、大変だったことなんてどうでも良くなるんだよな」


佐山さんは本当に嬉しそうに目をキラキラさせて、キーホルダーを手に取って眺める。

隣で佐山さんが作業している姿をずっと見てきたから、その嬉しさがすごく伝わってくる。

何度も電話口に意見していたし、揉めていることもしょっちゅうだったから、無事に出来上がって本当に良かった。

佐山さんが手に取るとみんなも手に取り始め、「これいいな」とわいわいと話している。


「私も手に取ってみてもいいですか?」

「もちろん」


デスクの上に広げられていたいくつかのキーホルダーを見た瞬間に一番私の心を捕らえたキーホルダーを手に取る。

明るいブラウンで羽根の形をしたものだ。

あまりにも先輩のイメージにピッタリだったから、気になっていたんだ。

 
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