モノクロ
「……ほんと、素敵ですね」
「ふ、相当気に入ったんだな。それ」
「はいっ! 販売開始されたら買います!」
「サンプル品でよければ、欲しいならもらってもいいけど」
「え? いいんですかっ?」
「あぁ。カタログ用の撮影をしてからだから、今週末になるけど」
「わっ! 嬉しいです~! ありがとうございます!」
「その代わり、友達とかに触れ込み頼むな」
「はい、もちろんです! 蜥蜴なんかはマンガ友達に人気ありそうな気がするので、ぐいぐい勧めておきます!」
「あれ、久しぶりに出たな。マンガトーク」
「え? そうですか?」
そうだったっけ?と私は首を傾げ、最近のことを思い返す。
思い浮かぶのは、仕事のこと、若菜さんや梢ちゃんのこと、そして、紀村先輩のこと。
あまり気にしていなかったけど、確かに最近はあまりマンガのことって考えていないかもしれない……。
面白がられているのはアレだけど、佐山さんが話を聞いてくれたり相談にのってくれたり企んでくれたりするお陰で、仕事のことも先輩のこともひとりでモヤモヤ考えることもないし、何より楽しい。
仕事の面でもプライベートの面でも佐山さんにはすごく助けられていて、今ではもう完全に頭が上がらない。
口から出るものがそうであるように、もしかしたらいつの間にか、生活の中心がマンガから仕事や先輩に変わっているのかもしれない、なんて思ってしまう。
……それって何か、思い描いていた“リア充”みたいだ。
とは言っても、今でももちろんマンガも変わらず好きなんだけど……。
週末用のマンガはしっかり入手済みで、次のコミケにも行く予定だし。
結局は今までの趣味に“リア充チックなもの”が新しく追加されただけで、あまり変わってないということのような気がする。
それでも楽しいからいい。