モノクロ
 

「毎日楽しそうに見える。今、仕事もプライベートも楽しいだろ?」

「……まぁ、確かにそうですね」


もちろん、今までの日々を否定するわけではないし、今も続いていると思っているけど、それ以上の充実感が今はあって。

いろんなことに手探りだけど、そんな日々は楽しくて仕方がない。

とは言っても、恋愛に関してはフラれちゃってるしうまくなんていってないけど……。

って落ち込んじゃう……。


「その調子で仕事もプライベートも頑張れ。まずはブックカバーの企画を上げることからだな。あとは、猛アタックするだけだ。きむ」

「! 佐山さんってばっ!」


再び先輩の名前が佐山さんの口から飛び出して来そうだったのを、私は阻む。

佐山さんは私の反応を見て、愉しげに口の端をくいっと上げた。


「くくっ。“あいつ”が佐々木さんをからかってる時、楽しそうにしてるの、わかる気がするな」

「う……っ、みんなしてひどい~」

「そういうところが佐々木さんの“愛されキャラ”の所以(ゆえん)なんだろうな」

「……愛されキャラって柄じゃないですけど……それは、誉めてくれてます?」

「あぁ。思いっきり、な」

「……ですか。なら、いいですっ」


にっと笑って頷く。

私が“愛される”タイプの人間とは思えないし、あんまり納得はできないけど、誉めてると言ってもらえるなら、納得することにする。

それだけが何の取り柄もない私にできることだから。

 
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