モノクロ
「──じゃあ、俺のことは“紀村大先輩”と呼ぶように!」
「あははっ! 何ですか、それっ!」
「呼ばなかったら、飯おごりな!」
「意味わかんないですって~!」
「何で。簡単なことだろ? ……ん。ていうか、なにこれ? 新しい企画?」
紀村さんの手が私のデスクに広げられた資料を掴む。
一気に真面目な表情になって、興味津々に文字を追う。
「あ、はい。たぶんそうです。近々話し合うみたいなので、まとめてて」
「ふぅん。ブックカバーねぇ。でもさ、この前も同じようなことやってなかったっけ? そんなにネタないってこと?」
「あ、いや、この前は本屋さん用のシンプルなもので、今回は一般向けだと。文具店とか雑貨屋さんで売ってるような」
「これ、このままじゃ面白くないよね」
「へ?」
「需要ないって。他のメーカーもやってるし、一般向けなら余計に。うまく捻らないと。そう思わない?」
「……えっと、まぁ」
実はまとめながら思っていたことだった。
どうやってお客さんに手に取ってもらえるものを作るのか、って。
やりようによってはきっと面白いものになるんだろうと思うけど、それを今後話し合っていくんだろう。
どんな意見が出るのか、密かな楽しみだったりする。