モノクロ
 

「──じゃあ、俺のことは“紀村大先輩”と呼ぶように!」

「あははっ! 何ですか、それっ!」

「呼ばなかったら、飯おごりな!」

「意味わかんないですって~!」

「何で。簡単なことだろ? ……ん。ていうか、なにこれ? 新しい企画?」


紀村さんの手が私のデスクに広げられた資料を掴む。

一気に真面目な表情になって、興味津々に文字を追う。


「あ、はい。たぶんそうです。近々話し合うみたいなので、まとめてて」

「ふぅん。ブックカバーねぇ。でもさ、この前も同じようなことやってなかったっけ? そんなにネタないってこと?」

「あ、いや、この前は本屋さん用のシンプルなもので、今回は一般向けだと。文具店とか雑貨屋さんで売ってるような」

「これ、このままじゃ面白くないよね」

「へ?」

「需要ないって。他のメーカーもやってるし、一般向けなら余計に。うまく捻らないと。そう思わない?」

「……えっと、まぁ」


実はまとめながら思っていたことだった。

どうやってお客さんに手に取ってもらえるものを作るのか、って。

やりようによってはきっと面白いものになるんだろうと思うけど、それを今後話し合っていくんだろう。

どんな意見が出るのか、密かな楽しみだったりする。

 
< 13 / 299 >

この作品をシェア

pagetop