モノクロ
 

「……普通、か」

「え?」


先輩は遠くを見るような目で、カラカラとグラスの氷を動かしていた。

心ここにあらず、という雰囲気で。

先輩、どうしたのかな……。

急にテンション落ちた気がするし、口数も少なくなったような気がする……。

私、何か変なこと言っちゃったかな、と不安になる。


「先輩? どうかしました? 何か様子が……」

「ん? いや、別に普通だけど」

「そうです?」

「うん」

「ならいいんですけど……」


そうは言いながらも、目線を落とした先輩はやっぱりいつもの先輩じゃないような気がして、心配になってくる。

もしかして、気分でも悪くなっちゃったのかな……?

先輩のことをじっと見ていたら、ふと先輩の目線が上がって、私のそれとぶつかった。


「!」

「ぶっ、そんな心配そうな顔すんなって~! ほんとに何でもないから」

「だ、だって……」

「ほんとかわいいなー、さきこは」

「!!」


くすくすと笑いながら先輩の手が私の頭に伸びてきて、わしゃわしゃと撫でてくる。

 
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