モノクロ
 

あわわ、ひぇ~っ!

先輩の言葉と行動に対して嬉しさとか恥ずかしさとかいろんな感情が襲ってきて目をぎゅっとつぶった時、私の手元からスルッとメニューが抜かれた。


「よし! さきこが眠れなくなる要素はなくなったし、次、頼も」

「へっ?」

「さきこの質問には答えたんだし、もう飲んでもいいだろ? ほら、さきこも空いてるじゃん。まだいけるだろ? 何飲む?」

「あっ、えっとー……じゃあ、ゆず酒のロックで!」

「お、やっぱりまだいけるんじゃん」

「まだ全然余裕です! けど……先輩、本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫だっつってんじゃん! まだいけるし、さきこに負けてらんねぇしな! すんませーん!」


先輩はいつもの明るさに戻って店員さんを呼び、私の分と焼酎(芋)を頼んでくれた。


……結局、先輩の様子がおかしかったのはなかったかのように、その後はお酒を飲みながら他愛のない話をだらだらと続けた。

先輩の様子に違和感を覚えつつも、笑顔になってくれたならいっか、と思っていた。



特に何かがあるわけではない。

でも、こうやって笑顔の先輩と時間を過ごせることが嬉しくて。

いろんな話をできることが楽しくて。

先輩が好きという気持ちを抱えながらも、私はこの位置に居れることに満足していたんだ。

 
< 143 / 299 >

この作品をシェア

pagetop