モノクロ
私は悩んだ末、ランチメニューの和風ハンバーグランチセット、若菜さんと梢ちゃんはオムライスランチセットを頼んだ。
和風ハンバーグはさっぱりしているのに食べ応えがあり、超が付くほどの絶品。
いつも以上のペースで料理を平らげていく私の目の前には、若菜さんの膝の上に乗った梢ちゃんがパクパクとご飯を食べている姿があって。
前も思ったけど、梢ちゃんが食べている姿もかわいくて癒される。
若菜さんは梢ちゃんがご飯を食べている様子を見守りつつ、たまにパクリとおかずをつまんでいる。
ぱくぱくっと二口食べたところで、私の前にある器は空になった。
「ごちそうさまでした。おいしかったです!」
「ほんと? 良かった~。ここ、お気に入りのお店なの」
「私も気に入っちゃいました! メニューも他にもたくさん美味しそうなのあるし、今度また来ます!」
「うん、ぜひ!」
梢ちゃんがお茶の入ったコップを掴もうとする姿を見て、若菜さんは「こぼさないようにね」と言って、梢ちゃんが飲む姿をじっと見つめる。
ぷはー、と梢ちゃんが飲み終わってコップを台の上に置くと、倒れないようにコップを移動させる。
この前も思ったけど、梢ちゃん中心の一連の動作がママそのもので、すごいなと思った。
でも、若菜さんは自分のことは何もできていない気がして、言葉を掛けた。
「若菜さんは食べなくて大丈夫ですか?」
「うん。少しは食べてるし、梢が食べ終わったら食べるから大丈夫だよ」
そう言いながら、若菜さんは梢ちゃんがこぼしたものをおしぼりで拭いたり、忙しなく動いている。
その姿にただ尊敬してしまう。
「ママって大変ですね……。尊敬しちゃいます」
「そう? 何かこれが普通になっちゃってるからね~。普段は旦那も手伝ってくれるし、言うほど大変ではないかな。明希ちゃんもそのうちわかるよ」
「……だといいんですけどね~。なかなか」
自分が結婚して、子供を産んで、育てて……っていう姿が全く想像できなくて、えへらと笑ってしまうだけだ。