モノクロ
 

「大学で私と一番仲が良かった子が、隼人と一時期付き合ってたことがあったの。半年くらいだったかな」

「……?」


……若菜さんと一番仲の良かった子が、付き合ってた……?


「あの、付き合ってたのって、若菜さんと先輩が、ではなくてですか?」

「え? 私が隼人とって? まさか! 私、隼人みたいなの全っ然タイプじゃないから!」

「あ、そうなんですか……」

「確かに隼人とは話は合うけどそれは友達としてだし、私、思いっきり面食いなの。もちろん中身が一番重要だけど、隼人みたいなタイプに恋愛感情は持てないし。旦那が好みドンピシャなのよね」

「……あ、なるほど」

「ね?」


って納得しちゃうのも先輩に悪い気はするけど、二人はタイプがかなり違うし、佐山さんと比べちゃったら若菜さんの話も納得できちゃう……。

でもそうなんだ……。本当に友達っていう関係なんだ。

少しホッとした。若菜さんに嫉妬するなんて嫌だったから。


「でね。その子がよく言ってたの」

「……」

「“隼人の心の中には誰かがいる”って。自分を見ていてくれているようで、その向こうに違う人を見てる気がする、って」

「……違う人を、見てる……?」

「そう。詳しいことはわからないけど、私もね、客観的に見てて彼女に対して本気さが見えない気がしてた。隼人は確かに彼女には優しくしてたけど、それだけっていうか……。いつも受け身で、隼人から告白したとかも聞いたことはないし……言い方は悪いけど、来るもの拒まず、去るもの追わずだったし。さすがに二股するようなやつではないけど、気付けば彼女が変わってたりして、誰でもいい、っていうか……。
表向きは誰にでも仲良くするように見えて、本音は見せないタイプだよ。……たぶん、今も、変わらないんだと思う」

 
< 150 / 299 >

この作品をシェア

pagetop