モノクロ
 

「先輩が楽しそうに笑ってくれるだけで嬉しくて。少しでもその笑顔を作るのが私だといいなって思うんです」


大したことはできないけど、ほんの少しだけでも、先輩の中に私がいればいいって思うんだ。


「……嫌ね。隼人を好きになる子は素直でいい子ばっかり」

「え?」

「ないものを求めちゃうのかな。隼人はもともと人懐っこいところがあるから人に近付くし、天性の人たらしだから近付かれやすいのもあるけど、ないものを求めて、付き合ったり気があるような態度を取るのかもしれない。……もう、たち悪いよ」


先輩がこの前言っていた言葉を思い出した。

「子供は素直だから好きだ」って。

それなら先輩は素直じゃないのかって訊いたら、誤魔化されたけど。

それは、ないものを求めてるってこと……?

はぁ、と息を吐いた若菜さんの手が私の手を包む。


「若菜さん……?」

「私で良かったら、話はいつでも聞くから。絶対にひとりで抱え込まないで」

「っ!」

「知り合って間もないし、話しづらいかもしれないけど」


若菜さんのあたたかい言葉に私は首を振る。


「~~っ、嬉しいです……っ! 近くに相談できるような友達もいないし、相談できる人あまりいなくて……。ありがとうございます!」

「……ううん。だって、もう私たち、友達でしょ?」

「! ……はいっ」


若菜さんの言葉も優しい表情も、全てが嬉しくて泣きそうになった。

嬉しくて涙が出るなんて、初めての感覚だ。

友達になれてこんなに嬉しいって思えるなんて、若菜さんは不思議な人だ。

 
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