モノクロ
 

「梢ちゃんって言うのかな? 誉めてくれて、ありがとうね?」

「ん!」

「滅多にないことだから、こいつも喜んでるよ。梢ちゃん、ありがとうな?」


そばにいた男の人も女の人の肩に手を置いて屈み、梢ちゃんに向かってにっこりと優しい笑顔を向ける。

すると、それまで笑顔だった女の人が、突然頬をぷうっと膨らませた。


「あっ、その言い方ヒドイッ! ケイくんのイジワルっ」

「本当のことだろ?」

「もうっ」


言い合う二人が何だかかわいくて、私と若菜さんはクスッと笑ってしまった。

すごくかわいいカップルで、幸せそうな笑顔に羨ましくなってしまった私は、ついポロっと本音を口に出してしまう。


「……いいなぁ」

「……明希ちゃん」

「あっ、何でもありません! あははっ」

「……」


窺うように見てくる若菜さんに、私は誤魔化すように笑った。

つい本音が出ちゃったよ。ヤバイヤバイ。

先輩を好きになってから、幸せそうなカップルを見るたびに、羨ましい気持ちでいっぱいになってしまう私がいて。

同時に、切ない気持ちが襲ってくる。

先輩は私の方には振り向くことはないのにバカだなぁ、って。

若菜さんが言う通り、きっと諦めた方が自分のためだとは思うけど……でも……。

 
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