モノクロ
 

「明希ちゃんもごめんね?」

「いえいえ! 梢ちゃん、人懐っこいですよね~」

「やっとね。少し前までは結構大変だったの。私と旦那以外にはなかなかなついてくれなくて。あ、不思議なことに、隼人には最初からなついてたけどね」

「そうなんですか? ……先輩って、老若男女問わず、なんですかね」

「もう、ほんと仕方のない男よね~」


くすくすと私たちは顔を見合わせて笑ってしまう。

先輩の人柄の良さって、子供にも伝わるものなんだな……。


「まま、かえる!」

「うん、かえろっか。じゃあ、明希ちゃんまたね」

「はいっ! 気を付けて」

「うん、ありがとう。明希ちゃんも気を付けて帰ってね」

「梢ちゃん、バイバイ~」

「ばいばいっ」


梢ちゃんのかわいい笑顔にきゅんきゅんしながら、小さくなっていく若菜さんと梢ちゃんの後ろ姿を見送る。

ふたりの姿が見えなくなった時、私は笑顔をふと崩し、はぁと小さく息をついた。

素敵なカップル、かわいい子供、そして素敵な夫婦。

もしかしたら私にはずっと手に入れられないものなのかもしれないと思うと、寂しさが私を襲った。

 
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