モノクロ
桃
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通勤時間は憂鬱に感じることが多いのに、今日はそんな風には感じない。
むしろ、昨日は遅くまで仕事をしていたというのに、身体が軽い気がする。
朝からすごくいい天気で雲ひとつない青い空が広がっているし、風は気持ちいいし、緑は綺麗だし。
目の前に見えてきた会社のビルを見上げると、窓に太陽の光が当たってキラキラしていた。
何だか会社の雰囲気がいつもと違って明るく見えるのは気のせいかな?
そう感じながら、会社のエレベーターホールに到着すると、そこには。
「あれ? 佐々木さんじゃん。おはよ」
「あっ! おっ、おはようございますっ」
昨日初めて話したばかりの紀村さんの姿があった。
……きっと、会社の雰囲気が違うように見える“理由”だ。
まさか会えるなんて……!
私のことを覚えててくれたことに、嬉しさが込み上げてきて、胸がドキドキと高鳴っていく。
昨日遅かったからか、紀村さんはすごく眠そうにくわ~っと大きなあくびをする。
そして、私を見下ろし、ふっと零れるような笑顔を見せてくれた。
……また、ドキン。
……あ、昨日は気付かなかったけど、身長差、結構あるんだ……。
私がチビっていう理由もあるだろうけど、紀村さんは私よりも20センチ以上は大きそう。
「朝から超元気だな? 昨日あんなに遅くまで仕事してたのに。すげぇパワーだよな。分けてほしい」
「!」
にかっと笑いかけてくれた紀村さんの表情に、私の心臓がさらに大きく跳ねた。