モノクロ
三神さんは先輩のことを好きなだけじゃなくて、よりを戻したいって思ってるんだ……。
もし、先輩も三神さんと同じような気持ちだとしたら……?
ふと頭をよぎった想像に、胸が締め付けられる。
もし二人がよりを戻してしまったら、きっと今までみたいに先輩と接することはなくなってしまう。
先輩も彼女がいるのに他の女と二人っきりで飲みに行くようなことはしなくなるだろうし、三神さんの気持ちを考えても、きっとしちゃいけないことだと思うから。
先輩とのあの楽しい時間がなくなってしまうんだ……。
カチャンと、私は完全にフォークを置いてしまった。
食べ終わるまで滅多に箸を置かない、この私が。
「この想いは誰にも負けないわ。あなたにも、絶対に負けない自信がある」
「!」
その強い自信を持った瞳は、私を簡単に怯ませる。
そんな私の情けない表情に、三神さんはふと穏やかな瞳に戻った。
まるで、私のことなんてライバルとも思えない、と言うかのように。
「知ってる? 隼人の心の中にあるもの」
「え……?」
どくん、と心臓が大きく跳ねる。
先輩の心の中……?
三神さんは何か知ってるの? 先輩が隠しているっていう“本音”を。
もしかして、若菜さんのお友だちが言ってたっていう「自分を見ていてくれているようで、その向こうに違う人を見てる気がする」っていうのを、三神さんも感じてるの?
「そうよね。知らないわよね」
「……」
「私は何があろうと、隼人の全てを受け入れる覚悟ができてるの。何もかも全部含めて、隼人のことが好き。それで辛くたって、私は構わない」
真っ直ぐと話してくる三神さんの凛とした表情からは、本当にすごくすごく心の底から先輩のことが好きなんだ、って伝わってくる。
「何度もそう伝えたのに、隼人は頷いてくれなかった……。“絢はちゃんと幸せになれ”って……。私の幸せは隼人の隣にいることなのに……」
「……っ」
ふたりの間にどんな葛藤があったかなんてわからない。
でも痛いくらいに三神さんの苦しい気持ちが伝わってきて、私は何も言えなかった。