モノクロ
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私は朝からそわそわしていた。
今日はイラストレーターさんである“aKiRa(あきら)”さんとの初顔合わせの日。
aKiRaさんとはブックカバー企画のコンセプトを伝えたり期日の相談をしたりとメールでのやり取りを1週間ほど続けていて。
実際に布の感じを見たり、もっと具体的に直接話したいと言われ、会社まで来てもらうことになったんだ。
実はaKiRaさんは私の憧れの人で、イラスト集も全部買い集めるくらい大好きな人。
デザイン担当になった時に一番に思い浮かんだのがaKiRaさんだった。
断られることを覚悟してブックカバー企画のイラストを描いてもらえないか依頼してみたら、企画の面白さに賛同してくれ、すぐにOKの返事がもらえたんだ。
まさか憧れの人と一緒に仕事をできる日が来るなんて夢みたいだし、実際に会うことができるなんて嬉しくて幸せで仕方がない。
とは言っても、浮かれっぱなしではいられないし、失礼なことをしないように気を付けないといけないけど。
ミーティングは午後2時から。
午前中からずっとそわそわしていた私は、佐山さんに何度も「落ち着け」と言われていて。
ついに約束の時間が近付き、佐山さんと一緒に会議室に向かっていた。
緊張で身体が固まっていてカクカクと変な歩きになってしまっている私を見て、佐山さんがくくくと笑いながら話しかけてくる。
「佐々木さん、そんなに緊張しなくても」
「だ、だって、aKiRaさんは憧れの人なんですよ!? 緊張しないわけがないじゃないですか! あードキドキします!」
私は緊張を振り払うように、資料を持ったまま腕を上下に動かす。
「ま、いいけど、仕事はしっかりしろよ? 佐々木さんってこういうのにはミーハーだし、目を離すとサインとかねだりそうだしなー」
「失礼な! そんなことしませんよ! 公私混同なんてしませんからっ」
「ほんとに?」
「ほんとですって~!」
「ふ、よろしい」
くすくすと可笑しそうに笑う佐山さんを見て、緊張をほぐすために声を掛けてくれたんだと気付いた。
企画の仕事をしたことのない私はこういう打ち合わせは初めてで、佐山さんもきっと気を遣ってくれてるんだ。
そう気付けば私も顔が緩み、ほんの少しだけど緊張がほぐれた気がした。