モノクロ
 

会議室に到着し、佐山さんが会議室のドアをノックした後、ドアを開ける。

「失礼します」と声を掛け部屋に入っていく佐山さんの背中を見ながら、私の緊張は最高潮に達していた。

落ち着け、落ち着け……!

言い聞かせるようにそう心の中で唱えた私は、深呼吸をして、会議室内に足を踏み入れる。

私が部屋に入った時には先に会議室にいたaKiRaさんは立ち上がっていて、緊張ですぐに顔が見れなかったけど、目に入った服装でaKiRaさんが男の人だと知った。

性別を明かしていないイラストレーターさんだしメールでのやり取りしかしていなかったから、性別は知らなかったんだ。

柄パン、そして、今にも飛び出してきそうなリアルな馬がプリントされたシャツの上に黒の革ジャン。

……なかなかハードな方なのかもしれない。

自分の中にイメージがやっぱりあるからどんな人なのか見るのは少し怖い気はしたけど、一緒に仕事をするんだしそんなことも言ってられない。

挨拶する時はちゃんと顔を見なきゃ!と意を決して顔を上げる。


「……。」

「……。」


時間が止まった気がした。

私の目に映ったaKiRaさんは驚いた表情をしていて……、そして、私もきっと同じ顔をしているはず……。

……って、冷静に分析してる場合じゃない!


「うっわ! アキじゃーん! マジか!!」

「や、やっぱり、ショウっ!? えっ、何でここに!?」


そこにいたのはちょうど3年前のコミケイベントで仲良くなったショウだった。

ショウはジャニーズばりのイケメンでありながらアニメが大好きで、私以上に“オタク”と呼ばれるような男だ。

コミケにはいろんな人たちが集まるけど、ショウはそのフレンドリーな性格のため、コミケではショウが一歩歩けば必ず声を掛けられると言われているほどの顔の広さを持っている。

最初はその凄さに遠巻きに見るだけだったんだけど、3年前のコミケで、ある作家さんのスペースでウハウハと同人誌を見ていたら、そこにいたショウとたまたま話して意気投合したことをきっかけに仲良くなったんだ。

そのショウがここにいるということは……。

 
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