モノクロ
 

「も、もしかして……、ショウがaKiRaさんなの!?」

「うん。そういうこと~」

「! う、うそ、ほんとに!?」

「ほんとほんとー。本名が水晶の“晶(しょう)”だから、読み方変えて“aKiRa”! 単純だけど、気に入ってんだよね~」

「!!」


けろっと言い放った笑顔のショウに、私は一瞬言葉を失った。

まさか憧れの人と、3年前にすでに顔馴染みになっていたなんて……っ!

そんなの想像もできるわけないし!

ど、どうしよう……っ!


「ま、待って……っ、心の準備がっ」

「んだよ、それー。他人行儀やめろって~。俺とアキの仲だろ~?」

「いやっ、状況が違うしっ!」


「えー」と不服そうな表情のショウを無視して、私はとにかく心を落ち着かせようと必死になる。

落ち着け。私、落ち着け……!

っていうか、今まで普通に友達として接してきたけど、数々のご無礼があったんじゃ……!

でもまさかショウが憧れの人だったなんて知らないし!

大パニックの私の耳に飛び込んできたのは、すごく冷静な佐山さんの声だった。


「話見えないんだけど。佐々木さん、知り合いか?」

「あぁっ、はい! ちょっとした知り合いですっ」

「ちょっとした、って酷くねぇ?」

「そっ、そんなことございませぬよ!」

「ぶはっ! 何語だよ~っ」


お腹を押さえてけらけらと笑うショウ、戸惑う私、そして、それを不思議そうな目で見る佐山さん。

奇妙な空間ができているというのに、私は気にすることもできないでいた。

そんな空間をびしっとまとめてくれたのは、やっぱり佐山さんだった。


「とりあえず立ち話もあれなんで、座りましょうか」

「あ、はい」

「ほら、佐々木さんも固まってないで。しっかりしなさい」

「! はははいっ! すみませんっ」


私は佐山さんに促されるまま、ショウの目の前、佐山さんの左隣に座った。

座ると同時に、佐山さんから私に聞こえるくらいの声で話しかけられる。


「……知り合いと言ってもまずは挨拶からな。その後、仕事の話を始めて。失礼のないように」

「っ、は、はい……っ」


仕事モードの佐山さんの声色に、私は一気に緊張感を取り戻した。

知り合いだと言っても、ショウとはビジネスの話をしていくんだ。

気を引き締めないといけないのは当たり前だ。

 
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