モノクロ
……でも、誤解は解いておかなきゃ……。好きな人に誤解されたままなんて、嫌……。
悲しさで涙が出そうになるのを堪えて、キッと先輩の瞳を見つめる。
「先輩、信じてください。ショウは本当にただの友達なんです。あの時はショウもパニックになってたし、仕事に関係することだったから私に頼るしかなかっただけで……。それに、ショウにはちゃんと彼女がいますから」
「あれ、何だ。そうなんだ? じゃあ、さきこの片想い?」
「! だから、違いますっ」
「別にいいじゃん、隠さなくたって。どんなに想っていても叶わない想いがあることくらい、俺も知ってるしさ」
「……え?」
あんなに私をからかうような表情をしていた先輩の表情が、ふっと変わった。
「だから、そばにいてくれるなら誰でもいいってバカなこと思っちゃうんだよな」
「……」
目に映る先輩の表情は笑っているのにどこか寂しそうで、私は囚われてしまう。
「誰でもいい」ってどういうこと……?
もしかして、先輩は“誰かに”叶わない想いを持っていて、三神さんのことをそんな風に……?
もしそれが真実なら……先輩も三神さんも悲しすぎるよ……。
「さきこは頑張れよ。“彼女”っていうんなら、まだ可能性はあるんだから。可能性が少しでもあるだけ幸せだって」
「……」
「応援してるからさ」
にっと笑った先輩は「送るからその辺で待ってて」と言い残し、立体駐車場の方に歩いていく。
私は何も言えず、その後姿をぼんやりと見つめることしかできなかった。
頭の中にいろんな気持ちが渦巻く。
先輩の心には一体、誰がいるの?
可能性のない想いを持ってるの?
三神さんは誰かの代わり、なの?
……「頑張れ」だなんて、私にだって可能性なんかないじゃない……。
まるで追い討ちをかけるように、他の男とのことを応援なんかしないで欲しかった……。
しんと静まり返った会社のエントランスで、私は一人、立ち尽くしていた。