モノクロ
「……隼人が叶わない恋ねぇ。あのおちゃらけキャラには似合わないし、それで悩んでるなんてまったく想像もつかないけど……納得はできるね。誰にも心を開かない理由がそれってことなのね」
「三神さんとよりを戻したのは間違いないと思うんですけど……、本当に好きなのは三神さんじゃない気がして」
「叶わない想いがあることは知ってる。そばにいてくれるなら誰でもいい」という先輩の言葉と寂しげな表情の意味を、あの後何度も考えた。
好きな人とよりを戻したのなら、あんな寂しそうにしないはず。
だからきっと、三神さんは先輩の本命じゃない……。
でも、想いの叶わない相手が誰なのかはさすがにわかるはずもなくて、相手がいる人とかなのかなって考えてたんだけど……。
……あれ? それって……。
目の前で真剣に話を聞いてくれている若菜さんをつい見てしまう。
「三神さんもぐいぐいくるわよね。明希ちゃんにも宣戦布告してくるし。それだけ隼人のことが好きなのね」
「……」
まさか、若菜さんじゃないよね……?
結婚していて素敵な旦那さんと子供もいて、入り込む隙間なんてこれっぽっちもない。
それに、大学の頃から仲良かったっていうし、ぴったり当てはまるんじゃ……。
いやいやいや! それは考えないでおこう。
「三神さんは隼人の心の中をどれくらい知ってるんだろうね」
「……先輩が心の中に何かを抱えていることは気付いている感じでした。もしかしたら、先輩の元カノさんたちと同じことを感じているのかも……。具体的なところまで知ってるかは、さすがにわかりませんけど……」
先輩の全てを受け入れる覚悟があると言っていたことを考えると、三神さんが何かしら感じていることは確かだ。