モノクロ
三神さんの想いの強さには勝てる気がしない。
私だって先輩のことが好きだし、人を想う気持ちに勝ち負けなんてないと思っているけど、そう感じてしまう強さを三神さんは持っていると思う。
たとえ先輩の気持ちが自分に向いていなくても、先輩を支える覚悟をしているんだから。
「明希ちゃんはやっぱり隼人のことを諦めるつもりはないの?」
「……先輩の眼中に入ってないことはわかってるんです。きっと、これからもそれが変わらないことも。でも、先輩の心の中を少し知ったら、もっとそばにいたいって思うようになりました」
「……うん」
私は三神さんとは違って、今の心地のいい位置にいれることに甘えている。
それでも、先輩を少しでも笑顔にすることが、私にできる唯一のことなんだと思う。
「先輩、すごく寂しそうだったんです。……誰でもいい、なんて言葉、辛すぎる」
先輩の寂しさを本当に埋めてくれる人はどこにいるんだろう……。
先輩が一緒にいて幸せだと思える人はどこにいるの……?
「……」
「あーちゃん、どこかいたいの?」
「え……?」
梢ちゃんの声と頭をぽんぽんと触れられる感覚に、ふっと顔を上げると、目に映る世界が潤んで見えた。
せっかくのかわいい梢ちゃんの顔が歪んで見える。
あれ……?
「よしよししてあげるねっ。いたいのいたいのとんでけー!」
「……っ!」
私の頭をぽんぽんと撫でて両手を大きく広げる梢ちゃんの姿を目に映しながら、私は頬を伝うあたたかいものに気付いた。
慌てて、袖で涙を拭う。
「やだ、ごめんなさい……っ! 泣くなんて恥ずかしい」
「……いいのよ。泣いてもいいの」
若菜さんも私に近寄ってきてくれて、背中をぽんぽんと撫でてくれる。
「あーちゃんっ! ままね、たくさんないても、そのあとにたくさんわらえばいいんだよっていうんだよ」
「!」
「ねっ、まま!」
「そうよ。たくさん泣いたら悲しい気持ちも痛さも、ぜーんぶ一緒に流れていって、また心から笑えるようになるの」
「だからないてもいいんだよ?、だよね! まま!」
「うん」
「~~っ」
若菜さんと梢ちゃんの言葉と笑顔があたたかくて、嬉しくて、次から次へと涙が溢れてきてしまう。
人のあたたかさを感じることができる私は幸福者だと思う。