モノクロ
紫
***
ある平日の昼過ぎ。
私は体を前のめりにしパソコンにかじりついていた。
……スゴい。ヤバい。どれもこれもステキすぎる……!
語彙力と表現力のない自分をもどかしく思う。
こんなにステキなものばかりなのに、それを言葉でうまく表現できないなんて。
いや、でも、どんなに上手く伝えられる表現力があるとしても、百聞は一見に如かず!だ。
ブックカバーのデザインの締め切りが近付く今週の頭頃からデザインが続々と上がってきていて、ついさっきついに全てが揃った。
デザインの依頼をしていたのは全部で5人。
デザインは最初にラフを出してもらい、こちらのアイディアも聞き入れてもらいつつおおよそのイメージは決めている。
もちろん、より良いデザインにするために修正をしてもらってもいいことにしていて。
他にアイディアが思い付けばプラスで作ってもらうことにもなっていた。
提出してもらったものの中から、ひとり1つ以上のいいものを採用するという流れだ。
どれも本当にステキだ。でも。
「うーん、何とも苦しい……」
「佐々木さん、食い過ぎか?」
「へっ?」
つい唸ってしまっていると、斜め上から声が落ちてきた。
顔を上げると、そこには佐山さんの姿があった。
確かにランチはお腹いっぱい食べたけど、いい感じにお腹に収まっているので問題ない。
私は手を横に振って否定する。
「あ、いえ! 今日の午前中にブックカバーのデザインが全て揃ったんです。でも、素敵なデザインが多いので全部採用したいなって思っちゃって……」
「よくある話だな」
「佐山さん、相談にのってもらえますか?」
「あぁ、もちろん」
佐山さんとふたり、パソコンのディスプレイを覗き込む。
そこに映し出されているのは、明日が第一次締切のブックカバー企画のデザイン画たち。