モノクロ
少ない人で2パターン、多い人で4パターンのデザイン提出があり、全部で16パターン手元にある。
10パターン以内に収めるという話になっているから、この中から少なくとも6パターンを切り捨てないといけないということになる。
私は悩みに悩んでいた。
どのデザインも作った人の想いや魂、こだわりが込められていて。
ものを作ることは何にでも共通すると思うけど、自己満足で終わるだけじゃなくて、誰か一人でも、ううん、可能ならより多くの人に喜んでもらいたいという気持ちがこめられているものだと思うんだ。
……というのは佐山さんの受け売りだけど。
全てのデザインからはそんな想いがビシビシ伝わってきて、しかもどれも絶対にお客さんに喜んでもらえると思えるもので、一人だと心を鬼にできそうになかった。
「どれも素敵でしょう?」
「あぁ、確かに」
「個人的に一番楽しみにしてたaKiRaさんのデザインも本当に最高で」
依頼していたものはもちろんどれも楽しみにしていたけど、特に楽しみにしていたaKiRaのデザインを指差す。
カラフルな花が敷き詰められたようなイラスト、シュールな動物が並んだちょっと風変わりなイラスト、そして特に私が好きだと思ったのは……。
「特にこのデザインにハートをズキュンと撃ち抜かれました」
「へぇ、ネコと赤色の毛糸? シンプルだけど、それがまたいいな」
家の中を思わせるクリーム色の背景にはレトロな家具、絵画、そして天窓からは星と月が顔を覗かせる。
部屋の中には赤色の毛糸が転がっていて、それを追いかける黒猫。
その毛糸は英文字を作り上げている。
「“きみにしか、できないことを”か」
「シンプルな言葉なのに、何か、すごく心に響きます」
「だな」
それはまさにこの前若菜さんとも話していたことで、今の自分に与えられたメッセージのような気がした。
ショウは先輩とのことを知っているわけではないし、私のためにこれを作ったわけでもないのに。
メッセージだけではなく、イラスト自体もこんなにシンプルなのに目を引く。
さすがaKiRaさん。やっぱりaKiRaさんにお願いして正解だった。