モノクロ
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デザインの検討や調整、生地の種類や栞の有無などを検討する作業を行う日々が慌ただしく過ぎていく。
試作に回すデザインもほぼ決まり、細かな調整を行っているところだ。
私はデザイン周りの作業がメインだったけど、佐山さんや他の人たちは具体的に予算やら業者とのやり取りやら今後の予定の把握やら、責任のかかる仕事で立ち回っていた。
「ごめん、佐々木さん。お昼入る前に、総務部長にお使い頼んでもいい? そのまま昼休みに入っていいから」
「あ、はい! 承ります!」
佐山さんから受け取った封筒の中には、数枚の紙がクリアファイルに挟まって入っていた。
それは、出荷までの細かい日程表が書かれ、企画リーダーの佐山さんや企画部長のはんこが押されている伺い書。
これが社長まで一旦承認されれば、試作から出荷までの細かい伺い書をよりスムーズに承認してもらえる仕組みになっている。
数枚の紙なのにずっしりとした重みを感じ、緊張感からか背筋が伸びた気がして、確実に総務部長に渡さなきゃと気合いが入った。
総務部のオフィスのドアを開けると、一番奥に総務部長がいるのを発見した。
何やらデスクの上にたくさんの資料を広げて格闘中のようだ。
辺りを見てみると他の社員も忙しく作業を行っていて、今日は月末直前であることを思い出した。
忙しさに気持ちが引きずられないように、気持ちを落ち着かせるためにふぅと息を吐いて、オフィス内に一歩足を踏み出す。
その時不意に、紀村先輩の姿が目に飛び込んできて、私は一瞬、息をのんでしまった。
先輩は企画部に顔を出すこともあり、その姿を見ること自体は久しぶりというわけではない。
でもどうしてもその姿を見るだけでドキドキしてしまうんだ。
先輩がデスクに手をつき少しかがんで笑顔を見せている相手は三神さんで、お互いに資料を指差しながら言葉を交わしている。
ふたりの周りの雰囲気はやわらかなもので、つい見とれてしまうくらいだった。
……すごく、お似合いだ。なんて絵になるふたりなんだろう。
……って、いけない。今は大切な伺い書を確実に提出しなきゃ……。
二人の姿を振り切るように私は総務部長のデスクに向かい、無事に伺い書を手渡しした。