モノクロ
「先輩、そんなところで寝たら体痛くなりますよー。シーツは替えましたからベッドで寝てください。私が床で寝ますから」
「んー……」
「ねぇ、先輩~、1メートル動くだけなので、ちょっとだけ起きてくださいよー」
「んー……」
何度先輩に声を掛けても、先輩は寝惚けたように唸るだけで全く起きてくれない。
完全に夢の中の世界へ旅立ってしまっているようだった。
これ以上声をかけて無理矢理起こすのも気が引ける。
「ダメだ……」
はぁ~と息をついて、私はベッドの脇の床に座り込み、ベッドに腕と頭を乗せる。
毛布に包まっているから寝顔は見えないけど、すぅすぅと規則正しい寝息をたてている先輩を見つめた。
……あんなに感情を露にする先輩は見たことがなかった。
いつも笑顔だし、何となくふわっとしていて、感情を読ませてくれない部分も多いから。
でも、好きな人のことになるとそうじゃないんだ。
それはきっと、想いの大きさがすごく大きくて、抑えられない気持ちがあるからで……。
私の片想い歴も長くなってきてるけど、きっと先輩はもっともっと長い間想いを持ち続けているんだ。
長ければ偉いってわけではないけど、その想いの強さを覆す力が自分にあるとは思えない。