モノクロ
 



……遠くで声がする。先輩の声。

それにくすくすという耳心地のいい笑い声も。

良かった。先輩、元気になったんだ。

先輩が笑顔なら私はそれでいい。

一緒に笑えたらそれだけで嬉しいから……。


「……ふがっ!?」

「ぶはっ! 起きた! 記録、30秒!」

「!?」


気持ちいい夢の中、急に息が苦しくなって、私はがばっと上半身を起こした。

腰が痛いのは床に座ったままベッドに寄りかかって寝てしまっていたからだろう。

漫画を読んでいるうちに、よくやってしまう寝方だ。

何!? 何なの!?

わけがわからずゲラゲラと笑う声の方に顔を向けると、そこには先輩がお腹を抱えてベッドをぽふぽふと叩きながら大爆笑している姿があった。


「せ、先輩っ!?」

「ひ~っ、さきこ、最高! ふがっ、て!」

「な、何で先輩が……っ」


ここにいるの!? ここ、私の部屋だよね!?

私はキョロキョロと辺りを見回し、ここが自分の部屋だと確信する。

そしてはっと昨日の出来事を思い出した。

先輩と飲みに行って、酔っ払った先輩が駄々をこねてここに来たことを。


「はぁ、笑った~」

「……」


くくっとまだ笑いを残した先輩を見ながらホッとする。

どうやら何かをされて笑われてるっぽいけど、先輩は元気そうだ。

先輩が楽しそうならそれでいいや。

 
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