モノクロ
 

「おはよ。さきこ」

「あっ、おはようございます!」


夕べの様子とは違ってすっきりとした笑顔の先輩が目に映る。

全然雰囲気なんてものはないけど、先輩と起きがけに挨拶をしているという事実が私の心臓をドキドキとさせた。

漫画でお決まりの、お泊まりした朝のラブラブカップルのストーリーやらお酒の勢いでヤっちゃったストーリーやらが頭の中に浮かぶ。

王道なものばかりだけど、悶えるほどの胸キュンがそこにはあって。

……私が一度も経験したことのない世界。


「……なぁ、さきこ」

「あっ、はいっ?」

「教えてもらえない?」

「え?」


ふと真顔になった先輩に、私の心臓がどきんと音をたてる。

何? 急にどうしたんだろう……?


「真実を教えてほしいんだ」

「……真実?」


先輩の真剣な瞳が私の心臓の鼓動をドキドキと大きく速くさせていく。


「さきこのことは信じてる。でも……さきこ、俺のさ……」

「……」

「寝込み、襲った?」

「……はいっ!?」


ねねね寝込みを襲う!?


「いやー、何かそういう感じが……」


先輩の視線がかくんと下に移り、ある場所を見ながらうーんと首を傾げる。


「どどどどこ見てるんですかっ! バカなこと言わないでください! 襲うわけないじゃないですかっ!」

「えー? ほんとにぃー?」

「ほんとです! 真実です!!」


先輩がじとーっと疑いの目で見てくるので、私は焦って否定する。

確かに先輩のことは好きだけど、寝込みを襲うなんてできるわけないし!

っていうか、待って、先輩、私の気持ちに気付いてないよね!?

変な誤解をされるのも困るけど、気持ちを知られてるのはもっと困る!

 
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