モノクロ

　

「まだ箱は開けてないんだ。佐々木さんに開けてもらおうって思ってさ」

「え、でも、サンプル品を最初に手に取るのはリーダーの方が……」

「みんな、考えは一致してるよ。佐々木さんに最初に手に取って欲しいって」

「佐々木さん、早く開けて？　私、早く見たい！　もううずうずしてるの！」

「は、はい……っ」


佐山さんと大嶋さんの言葉に頷いて周りを見渡すと、みんなが笑顔でうんと頷いてくれた。

私は大きく深呼吸をし、震える手をそっとダンボール箱に伸ばす。

ミシン目に沿ってバリバリとダンボールを開けていくと、中に緩衝材が見え始めた。

緩衝材とその中に包まれたものをそっと箱から取り出し、デスクの上に置いた。

緩衝材のテープを剥がして開いていくと、ビニール袋に入ったサンプル品、つまり様々なデザインがプリントされた数種類のブックカバーが現れた。


「……」

「あぁ、いいな」

「佐々木さん、早くブックカバー取り出してよ！」

「は、はい」


にこにこ笑顔の大嶋さんに促され、一番上にあったそれを手に取る。

ビニールの中からブックカバーをそっと取り出すと、布の質感が手に馴染んだ。


「すごい……」


今私が手にしているのは、aKiRaさんがデザインしたもの。

ナチュラルベージュの部屋に猫が数匹いて、赤よりもやさしい茜色の毛糸の線が文字を作り出す。

文字を紙にプリントして見ていた時とは全然違い、やわらかさがある。

イラストに合うようにと選んだ布の質感も、プリントされたイラストの雰囲気とぴったりだ。