モノクロ
先輩と佐山さんも私に続いてブックカバーを手に取り、表、裏と興味津々に見ている。
その光景を見て、走馬灯のように思い出す。
……先輩と初めて会ったあの夜から、“今”に繋がる道が始まったんだ。
先輩の背中を押してくれる言葉がなかったら、今の私はいない。
そして、佐山さんの助言や助けがなかったら、私はここには辿り着けていない。
他にもたくさんの人の力が集まって“今”があるけれど、私の大きな原動力となっていたのは先輩と佐山さんの二人なのだと確信できる。
二人がいてくれたから、あの日の想像が形になった。
「……っ、先輩、佐山さん、ありがとうございます……っ!」
ありがとうだけでは伝えきれない感謝の気持ちが溢れてきて、私は頭をぺこっと下げた。
それとともに出てくるのは涙。
「さきこ、顔上げろって……って、何泣いてんだよー! くくっ、泣くなって!」
先輩が私の肩をぽんぽんと叩きながら顔を覗き込んできて、泣いている私に気付き苦笑する。
頭をよしよしと撫でられてまたさらに涙が出てきてしまった。
「だ、だって……っ、嬉しくて……っ」
「ふ、サンプル品ができた時は泣いてなかったのに、実際の商品ができあがって緊張が切れたか?」
「頑張ってたもんなぁ、さきこ。うん。諦めずによく頑張ったよな。よし、ここからは俺たち営業が頑張る番だな」
優しい表情で私を見てくれていた先輩の瞳に力強い光が宿る。
「そうだな。これでほぼ企画部の作業は終わり。あとは営業と販促と管理に任せることになるな」
「あぁ、任せとけ。俺もいろいろ考えてるからさ。お前らが作った商品、たくさんの客に手にとってもらえるようにしっかり売り込むから。さきこ、ここで終わりじゃないからな? ここからが、また新たなスタートだ。まだたっぷり楽しみはあるからな!」
「……はい!」
そしてその1ヶ月後、たくさんの想いが詰まってできあがったブックカバーが発売の日を迎えたのだった。