モノクロ
「あっ、そうだ! 見て見てっ! お姉ちゃんが作ったブックカバー、買ったの! 花柄がすごくかわいくて、即決しちゃったぁ。友達もかわいいって言ってくれて、すごく評判なんだよっ。男の子もおもしろブックカバー買ったって自慢してる子もいるの!」
夏乃が通学バッグから取り出したのは、すっかり見慣れたデザインのブックカバーがつけられた文庫本だった。
「え、夏乃、わざわざ買ったの? 欲しいなら言ってくれればプレゼントしたのに」
「ううん! 決めてたの。絶対に自分のおこづかいで買うって! お姉ちゃんの作ったものがお店に並んでるところも見たかったし、ブックカバーの売り上げに私も貢献したくて!」
「夏乃……っ、ありがとう~! なんてデキル妹なのっ! かわいい妹よ!」
「やだぁ~お姉ちゃん」
夏乃にガバッと抱きつくと、夏乃はきゃっきゃと楽しそうに笑った。
因みに身長は夏乃の方が高い。
あんなに小さいと思っていた夏乃はいつの間にか私よりも身長が高くなっていて、身長だけを見ると今では夏乃の方が姉みたいだ。
まぁ、横幅は私の方があるけれど。
「私、ずっとお姉ちゃんの応援してるからね!」
「え? 何? 急に。買ってほしいものでもあるの?」
「違うよー! お姉ちゃんにはいつも応援してもらってるし、幸せになってほしいから!」
「夏乃……っ、ほんとに何ていい子なのっ」
妹にめろめろになりながら、私は何て幸せなんだろうと改めて噛み締める。
夏乃のことをぎゅうっと抱き締めていると、コンコンと部屋のドアが鳴り、ドアが開け放たれた。
ドアの向こうから登場したのは弟の晴海。
晴海も私と同じタイミングで実家に戻ってきていて、こうやって3人が集まるのは久しぶりだ。
晴海は抱き合っている私と夏乃のことを怪訝な表情で見る。
「……何やってんの」
「あっ、晴海も仲間に入りたい?」
「別に」
「もー素直じゃないんだから!」
「明希、うるさい」
そう言いながらも、晴海は部屋に入り込んできて、夏乃の机のイスにどかっと座り、悔しいくらい長い足を組む。
昔から変わらない、“俺もおしゃべりの仲間に入れろ”のサインだ。
コーヒーを飲む晴海に問い掛ける。