モノクロ
「晴海、あの溺愛してる彼女とはどうなってるの? そろそろプロポーズした?」
「……俺、部屋戻るわ」
「ダメダメー! もう君は立派に私たちの仲間入りを果たした! 質問に答える義務があーる!」
「そーだぁ、そーだぁ!」
「はぁ、意味わからん。……おい、夏乃。こいつは誰だ」
「えっ?」
晴海の目線が机の横に乗っていた、イルカのモチーフがついた写真スタンドに釘付けになる。
そこに飾られているのは仲睦まじく寄り添っている夏乃と彼氏くんの写真。
私も部屋に入ってきてすぐに問いただした写真だ。
夏乃の彼氏くんははっきり言って、その辺の雑誌モデルにも負けないくらいのイケメンだと思う。
ふたりが並ぶ姿はものすごくお似合いだ。
「彼氏だよ?」
「……どういう男なのか説明しろ」
「えぇー! お兄ちゃん、うるさいから嫌! っていうか、自分は言わないのに私にだけ言わせるなんてズルイ!」
「夏乃の言う通りよ! それに晴海は心配しすぎなの! 私が聞いた感じだと大丈夫だったし安心しなよ。夏乃のことを大切に思ってくれてるいい子だと思う」
「明希の“大丈夫”は信用できない」
「あっ、出た! 晴海の過保護!」
「ほら、夏乃。お兄ちゃんにちゃんと話しなさい」
「いや~! お姉ちゃん、助けて~っ」
「安心しなさい、夏乃のことは私が守ってあげるわっ」
「明希、邪魔すんな。つーか、お前も変な男に捕まってねぇだろうな?」
「捕まってませーん!」
「男と付き合う前に俺に相談しろよ? 俺がちゃんと見定めてやる。夏乃もほら、早く話せ」
「やだっ! ねぇ、夏乃っ」
「うん! や!」
「まったく、お前らは!」
「きゃーっ」
晴海の手が私と夏乃の頭にぬっと伸びてきて、髪の毛がぐしゃぐしゃと掻き回される。
ぎゃんぎゃん言いながらも、私たちは楽しい夜を過ごした。
普段は離れてても、会えばこんな風に笑い合える家族ってやっぱりいいなって思った。